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  高気密・高断熱住宅は火災の時危険な建物です。


1) 【高気密・高断熱住宅の火災について】

 住宅と建材は場合が変わると長所が短所になることがあります、例えば壊れにくい物は壊しにくいというように。
「高気密・高断熱住宅」は火災に関しては長所が短所になります。

「高気密・高断熱住宅」に関わっている多くの方がC値(隙間相当面積)は1/u以下が望ましいという方が多くいます、
 C値が1/u以下ということは平均的な8帖の広さの部屋で隙間が割り箸一膳分も無いのです、これでは窓を閉めたら自然換気は無いに等しいと言えます。

 排気ガスやスギ花粉のある大気の中で暮らしている私たちはどうしても窓を閉めてフィルター付きの機械換気に頼りがちになります、家電やコンセントからの出火や屋内配線のFケーブルが融ければ電気は遮断され機械換気は止まります。

 平均的な8帖の広さの部屋の気積は約31ですから、窓を閉めた状態で火災になり機械換気が止まれば、わずか0.9の酸素が燃焼に使われただけで、室内は人間の器官が正常に働かなくなる(普通の動きができなくなる)酸素濃度18%以下の低酸素状態になります、そして低酸素状態の火災は毒性のある一酸化炭素を作ります。

 このことから高気密住宅の火災は短時間で室内が低酸素状態になるため、体が思うように動かないで避難出来ないうちに一酸化炭素の有害ガスを吸い込み死亡する危険があると言えます。

 次に高断熱ということは火災になったとき室内の温度が逃げないということですから室温は急速に上昇します、室内に発火点温度の低い物があれば裸火が触れなくても燃え始めるということもあります、また家具なども急速に発火点温度に近づいているわけですから、気がつけば部屋中火の海ということもあり得ます。

 窓もドアも閉めて避難した後、鎮火したように見えてもそれは室内の酸素が無くなったために燃焼が止まっているだけで、室温は高いままの状態が続いているため、ドアを開ければ空気(酸素)が入り込み再び激しく燃え始めることもあります。

 現在「高気密・高断熱住宅」に住んでいる方はもちろん、これから住もうという方も[火災]に対しては十分な対策と心構えを備えてほしいと思います。  

2) 【ウレタンについて】

 建築現場では[発泡ウレタン=火災]と考える人が非常に多くいます。
その理由はいくつかの現場で火災事故を起こし死傷者を出しているからだと思います、これはウレタンによる結露防止工事が急速に広まったため職人と営業マンへの教育が徹底していなかったことと、ゼネコンと他職に対する説明が不足していたこと等が挙げられます。

 乗用車の座席、マットレス、ソファー、女性のボディースーツ等身近にある物や塗料、シール材、防水材などの建材、そして耐久性と強度の必要な自動車のバンパー、救命用浮輪、海洋に浮かぶブイなどのウレタン製品の製造過程での火災はあまり報告されていません。

 大切なのは製造過程中の正しい取り扱い方を周知徹底させることだと思います。 


3) 【構造について】

 1978年に日本建築学会北海道支部主催の「北方圏寒地住宅視察団」が派遣された時の結論、すなわち[高断熱住宅には防湿・気密層、透湿層、通気層が必要]という考え方から高気密・高断熱住宅の多くが通気層工法を採用しています。

 通気層工法とは壁の下側に空気の取り入れ口をつくり、壁の上側に空気の排出口を設けて壁全体に空気を流して壁内結露を防ぐ工法で、火災の時は煙突効果となり燃えやすい壁構造です。

 特に通気層に隣接して発泡プラスチック系断熱材(ウレタンやスチレンボードなどの石油製品)を使用した場合は燃えやすくなります。

 通気層工法の壁の中に火が入った場合、外壁は雨水が入らないようにしっかりと雨仕舞してあるために放水しても消火水が壁の中に入らないので壁の中は非常に消火しにくくなります。

4) 【魚尾灯について】

 魚尾灯とは魚の尾のような特殊な形状をした炎口を持ったバーナーで、その炎口で試験体(例えば発泡ウレタン)の端に火をつけて何センチ燃えた処で火が消えたかを計って難燃剤の効果や試験体の難燃性を計る物です。

 現在使用されている発泡ウレタンは60o以内で消火するので建設省告示第1231号難撚材料試験に合格している製品ですが、化成品(石油製品)であるため周りで燃えている火力によっては全焼します(実際に火災になれば難燃3級に合格していても燃え広がる速度が弱まるだけで全焼します)。


5)【材木とウレタンとスチレンの燃え方】



木材と発泡ウレタンとスチレンフォームを約5秒間
チャッカマンの火を近づけて燃やした後の形
 写真は木材と発泡ウレタンとスチレンフォームをチャッカマン(ライター位の火)で約5秒間位燃やした跡です。いずれもチャッカマンを消すのと同時に火は消えました。

 木はわずかに焦げ目がついただけでウレタンは燃えた部分だけ炭化して縮小しています、スチレンフォームは液化して大きく変形しています。

 木とウレタンはそのままの形で燃えるのに対してスチレンフォームは一度液化してから燃えます。

 「木とウレタンを燃やした時はラットが死んだがスチレンフォームでは死ななかった」と言っている人がいますが、液化して流れたスチレンが完全に燃え尽きるまで燃やしたのでしょうか?その辺のところを明らかにしてほしいと思います。

 建築現場で「屋上断熱防水のスチレンフォームに火が付き、側溝の中に流れ込んで燃えたために消火に難儀をした」と聞いたことがあります。

 火災のことを考えて断熱材を選ぶならば不燃材であるグラスウールかロックウールです。
 現実にはグラスウールで断熱した家でも火災が起きて死者も出ていることから、大切なのは火災に対する対策と心構えだと思います。(グラスウールの不燃性を否定している訳ではありません)

 例えば寝たばこの習慣のある人の部屋には音声警報機付きの煙探知機を設置して、出入り口付近の決まった場所に小型の消火器を置いておけば、もしもの時は家人が気が付き初期消火ができると思います。

 (1)のところで書いたように高気密・高断熱住宅は火災になれば人的被害が出やすい構造です、だからと言って寝たばこをやめろと言うのでは寝たばこの習慣のある人にとってストレスのたまる住みにくい家になってしまいます。

 家人の生活習慣を設計士や工務店に話してストレスの起きない対策を講じてもらうのが 《いい家》 を作る近道です。 


 6)火災と断熱材(火災に対する断熱材の影響)

 発泡ウレタン
発泡ウレタンは火災の時人的被害と建物の被害が一番大きい断熱材です。
その理由は、ウレタンの中に火が入ってしまうとウレタンの表面は水をはじくので非常に消火しにくくなります、特に天井や小屋裏など上部が燃えた場合は消化しにくい火災になり、被害を大きくします。。
又、発泡ウレタンは物によっては瀑燃現象を起こすことがあります。
 
爆燃現象
 爆発と燃焼の中間の燃え方で火災発生中の部屋で裸火に触れていないウレタンまでも一緒に燃え上がる現象。
爆燃現象で消防士の方が亡くなった事例も報告されています。

発泡ウレタンを使用する場合は必ず難燃タイプを使用し、小屋裏など目に触れない部分でも耐火板などで覆う必要があります。

 ポリスチレンフォーム
ポリスチレンフォームは一度液化してから燃えるのでウレタンほど消火しにくいことはありませんが化成品(石油製品)である以上、火災の時延焼を拡大する恐れはあります。

 セルロースファイバー
セルロースファイバーは古新聞紙を繊維状にしたものですので燃えやすい感じがしますが、ホウ酸処理がしてあり、かなり燃えにくいそうです。
セルロースファイバーで断熱をした住宅の火災の事例を知らないので、詳しいことはわかりません、セルロースファイバーで断熱をするときはメーカーに相談してください。

 グラスウール
グラスウールは不燃材料です、火災の時建物が焼けてもグラスウールは溶けて固形物になっても燃えずに残っています、当然延焼を防ぐ効果はあります。

 ロックウール
ロックウールは別名耐火被覆と呼ばれるほど火災に強い製品です、一定規模以上のS造(鉄骨造)の建物には梁や柱に使用を義務付けられるほど火災に強い断熱材です。
火災の時、火災から人や建物を守ります。

 火災の時被害の大きい順に並べてみます。
発泡ウレタン>ポリスチレン>セルロースファイバー>グラスウール>ロックウール

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