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 1)RC造(鉄筋コンクリート造)は外断熱の方が優れています?。
 2)珪藻土では現在結露している壁の結露防止にはなりません。
 3)マンションの断熱リフォーム


1)【内断熱と外断熱】

 【内断熱】    【外断熱】
 内装下地のプラスターボードと躯体コンクリートの間に断熱材を入れた断熱工法です。    躯体コンクリートと外装材の間に断熱材を入れた断熱工法です。


 2)【RC造の内断熱と外断熱の水蒸気圧】

RC造の内断熱の水蒸気圧(冬の場合)















 RC造の場合は躯体が湿気を通しにくく熱容量の大きいコンクリートでできているため、断熱材の位置の違いは機能に大きな差ができます、断熱材に湿気が入り込むと内部結露が発生し、内装材の耐用年数に影響を及ぼすことがあります。
 
 壁を断熱すると、室内の壁表面の結露は無くなりますが、断熱材に湿気が入り込めば断熱材の裏側で結露が起きてカビが生えます、そのカビはいずれ壁表面にまで広がります。

 断熱材の室内側は室温に近くなり、外気側は外気温に近くなります、(この温度差を温度勾配と言います)。

 飽和水蒸気圧は温度勾配に連動します。
 
 内断熱は温度勾配のできるところ(断熱材の位置)が躯体コンクリートより室内側になり、外断熱は躯体コンクリートの外側になります、

 水蒸気は水蒸気圧の高い方から低い方へ流れるのですが、内断熱の場合はその途中で断熱材にに入り込んだ水蒸気が低温に出会うと実在水蒸気圧が飽和水蒸気圧よりも高くなり、内部結露域となり壁内結露となります。

 外断熱の場合は躯体コンクリートは断熱材の内側(室内側)にあり、温度は室内と同じになるため飽和水蒸気圧も室内と同じになり、飽和水蒸気圧が実在水蒸気圧より低くなることがないので壁内結露が起きることがありません。

 外断熱は、躯体コンクリートの熱容量の大きさと熱伝導率の高さから、アンカーなどの熱橋も温熱橋になり結露の原因になりません。
 
 RC造の場合は外断熱の方が優れていると言えます。
RC造の外断熱の水蒸気圧(冬の場合)















  (この図は定常計算の時のイメージ図です)


 しかしながら、専門家の先生の中には、<コンクリートの吸放湿性>、<断熱材の透湿抵抗値>、<換気による排湿>などを考慮した現実的な非定常計算にすれば内断熱でも結露しないと言っている先生もいます。

 実際のところ発泡ウレタンによる内断熱マンションでは20年以上経っても欠陥工事と手抜き工事以外のマンションでは壁内結露が発生していません。

 内断熱でも内部結露しなければ、建築コストの問題や室内が適温になるまでの時間などから外断熱の方が優れているとは言い切れません。 


 3)【打ち込み内断熱の結露被害】

  打ち込みの断熱材はボード状の物を使うためどうしても継ぎ目が出ます、

 継ぎ目は湿気を通すため、継ぎ目から入った湿気が冷たいコンクリートに触れて、断熱材とコンクリートの間で内部結露を起こします。

 スチレンフォームの粗悪品の中には昇華現象(ナフタリンと同じ現象)をおこすものもあります。

 また継ぎ目にコンクリートのトロがしみ込めばそこが冷熱橋になり、そこに結露が発生し
ます

 打ち込み断熱の結露被害の多くはアンカー等の冷熱橋の断熱補修不徹底と断熱材の継ぎ目が原因です。

 内断熱で断熱材を後から張り付けた場合、断熱材と躯体コンクリートの間に隙間が出来ると壁内結露が起きやすいようです、それはコンクリートに含まれた湿気が(澱み空気なっている)隙間の空気層に放湿されてしまうからと言われています。

 現場発泡ウレタンはシームレスのため断熱材の継ぎ目が原因の結露被害が起きることはありません、又発泡ウレタンは躯体コンクリートに密着するため断熱の形状としては結露しにくい工法です。

4)【マンションの断熱リフォーム】

イ)マンションの断熱の現状

 私たち現場で施工する発泡ウレタン工事業者はマンションのウレタン工事を「結露防止工事」と呼んでいます(注文主様やゼネコンもそう呼んでいます)、そのため施工範囲は結露の起きそうな所に限定されます、つまり、外周壁とその折り返し部分しか断熱施工をしません。

 例えば窓の結露を止めたいというだけならばカバー工法で窓を高断熱化するだけで十分です。(熱は半分以上窓から逃げると言われているので窓の断熱が一番重要です)

 それ以上の高断熱化を図るならば、結露防止工事以上の広範囲な断熱施工が必要です。
 
ロ)エコ目的の断熱リフォーム

 「断熱リフォームをしたのにそれほど暖かくならない(涼しくならない)」と言っているお施主さんがいます、それは部屋全体を断熱しなかったからです。

 マンションの躯体のコンクリートは熱を通し易い性質があるので、隣の居宅との仕切り壁のコンクリートを伝わって熱は隣へ逃げてしまいます。

 エコを目的に断熱リフォームをするならば、窓だけでなく、天井・壁・床など、すべてを何らかの断熱をしなければなりません。

ハ)断熱リフォーム施工例

 下の写真は、マンションの断熱リフォームを発泡ウレタンで断熱した現場の写真です。
 隣家との仕切り壁、梁、柱、天井などすべて断熱してあります。

 
断熱施工前(解体後の状況)
 
100V可搬型発泡機によるウレタン吹き付け
   
 
ウレタン吹き付け(断熱)完了状況
 
ウレタン吹き付け(断熱)完了状況

 5)壁の中の空気層
    壁の中に空気層がある場合は空気層の位置によって内部結露を起こすことがあります。

 1図の場合は新築のマンションの断熱です。断熱材とコンクリートが密着しているため、断熱材に入り込んだ湿気はそのままコンクリートに吸湿されます。

 およそ50年位昔に、北海道で空気の断熱効果を利用しようと中空層を設けたことがあります、結果は中空層の中に氷が大量にできてしまうという被害が出ました。

 東京近郊では北海道ほどの温度差が無いことと、ビニールクロスが一定の防湿効果があること、そして独立気泡の断熱材を使用すれば、断熱材を通してコンクリートまで達する水蒸気量はわずかなので、すぐに内部結露になることはありませんが、2図のような場合は、長期的には内部結露が発生する恐れはあります。
 


6)【住み方について】

 北欧などの外断熱先進国の集合住宅がエアコンの温度設定を管理組合が決めているように、外断熱の場合は全館同一温度に設定にしなければなりません。

 また空き室などがある場合は住民全員で費用を出し合い空き室も同一温度の空調をしなければなりません(躯体コンクリートに温度むらをなくすために)。

 内断熱の場合は室内の温度設定は住む人の好みで自由に設定できますが、温度を伝えやすく、湿気を堰きとめるRCで躯体が出来ているため、室内に澱み空気を作らない住み方と室内の湿度が上がりすぎないような住み方が必要です。
 
 例えば外壁側に家具を置く時は、すのこ状の物の上に置くとか足つきの物を使い、壁から数センチ離しておけば澱み空気が出来にくくなり結露はしにくくなります。



7)【左官材による結露防止】

 RC造のマンションの部屋が結露してカビが発生すると、珪藻土など左官材の持つ「調湿機能」という言葉に惑わされて珪藻土に塗りかえれば結露が無くなると錯覚してしまう方がおります。

 結露は 《断熱》と《換気》と《住み方》 の問題です、左官材に断熱効果と防湿効果が無ければ左官材で結露防止は出来ません(結露防止に必要なのは調湿機能ではなくて防湿機能と断熱機能です)。

 RC造のマンションの部屋が結露する理由の多くは、前項で述べたような理由で壁内結露を起こし、断熱材が含湿し、断熱性能が劣化して構造的に結露が起きているのです、このような場合は表面仕上げに調湿機能を持たせても結露は無くなりません。

 現実にRC造マンションで結露している部屋は、壁表面がすでに露点温度以下になっているので、そこに珪藻土を塗っても珪藻土の裏(結露していた壁の表面)は露点温度以下になっているため、調湿作用で吸湿された湿気は露点温度以下のところで壁内結露を起こします。

 左官材の中には糊料などにカビの栄養になる物が使われていることがある事と、左官材は保水作用があるため、菌糸が左官材の中まで入り込み、しつこいカビになってしまうこともあります。

 
 左官材の調湿機能というのは、左官材が露点温度以下にならない壁構造材として使用して初めて健康的な建材になります。

 蔵造りの壁が左官材だけで出来ているにもかかわらず壁内結露が起きないのは。
  1. 壁の中に湿気を堰きとめる物が無い事。
  2. 荒木田土や漆喰が湿気を通し易い事。
  3. 壁構造全体に調湿機能がある事。
  4. 壁構造全体からむらなく湿気を逃がしている事。
  5. 断熱材が入っていないため実在水蒸気圧が飽和水蒸気圧よりも高くなる事が無いこと。
 等の理由によります、但し蔵造りは床下からの湿気対策が無いため、床は定期的に張り替えているようです。


 このページがマンションの断熱を考えるときお役に立てれば幸いです  相良 和文

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