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 1)防湿層+通気層は断熱の寒冷地仕様です。
 2)茅葺屋根の断熱。
 3)外気が通れば必ず乾燥すると思うのは誤りで通気層は要りません。
 4)通気層内の黒かび


1)【通気層工法について】

高気密・高断熱住宅の始まりはオイルショックから
1973年 オイルショック
 オイルショックの石油供給パニックから、北海道では灯油代節約のため、住宅を建てる時断熱材を厚くする人が増えました、その結果壁内結露が多くなり土台が腐ったり、キノコ(ナミダダケ)が床下や土台に生えたり(ナミダダケ事件)、新築後2〜3年で床が落ちるなどの被害が出ました。
1978年 北欧視察団派遣
 日本建築学会北海道支部主催の「北方圏寒地住宅視察団」が派遣され、高断熱住宅には防湿・気密層、透湿層、通気層が必要と結論。
1980年  ナミダダケ事件がNHKで放送され高気密・高断熱住宅への関心が高まる。
1981年頃 室蘭大学蒲田研究室が高気密・高断熱住宅を提案。
 札幌にSHS工法による実験住宅が建設される、冬に壁内結露が発生しなかったことから外張り断熱の評価が高まる。
1982〜1985年頃  マンションの結露による喘息、アトピーなどの被害がテレビ、新聞、建築雑誌などに取り上げられ、マンションの断熱について関心が高まる
1999年  「いい家がほしい」「史上最大のミステーク」が発刊される。
 2冊ともベストセラーになり、これ以後、「外断熱以外はすべて欠陥工法である」という誤った認識が広まる。

 現在の高気密・高断熱住宅の断熱の方法のほとんどが、1978年の「北方圏寒地住宅視察団」の結論、即ち「高断熱住宅には防湿・気密層、透湿層通気層が必要」という考えに基ずいて通気層を採用しています。
この工法は北海道よりも寒いストックフォルムなど北欧の工法です、つまり断熱の寒冷地仕様ということです。

 結露について他国の工法を取り入れる時には、その国の温度と湿度を検討しなければなりません。

 夏季型結露は一度発生してしまうと結露水量が多いことや気温がカビの増殖条件に当てはまっていることなどから被害は大きくなります。

 2)【東京とストックフォルムの気候】
 2012年の東京の平均気温と平均湿度
 左の二つのグラフは、東京とストックフォルムの気候を比較したものです。

 ストックフォルムでは気温の高いときは湿度は下がり、湿度の高い時期は気温が下がっています、しかも気温が20℃を超えることもありません。ストックフォルムの気候は、カビの発生しにくい気候です。そのため通気層工法が正しい工法なのです。

 東京では気温の高い時期に湿度が上がっています。その上、カビの生育に必要な湿度が70%を超え、気温が25℃を超えることがあり、カビが生えやすい気候です。
 東京とストックフォルムの気候を較べてみれば、東京の大気は壁内に通すには不向きであることが判ります。

 このグラフは月別の平均値であり、日別に見れば東京でも気温の高い日は湿度が低く、湿度の高い日は気温が低いため、通気層内にカビが生えることはありません。

 しかしながら、建物内や通気層内に温度差や澱み空気があったり、毛管現象の起きるところがあれば、長期的にはカビは生えやすくなります。
 
1970年代のストックフォルムの平均気温と平均湿度



3)【壁内通気について】

 地下ピット内の工事をする時、酸欠対策のために外気をピット内に送るのですが、夏の一時期、外気を送るとピット内に結露が発生することがあります。空気が通れば必ず乾燥するという考えは誤りです、温度差によっては空気が通れば逆に濡れてしまう時期もあるのです。
 
 夏の高温多湿の空気や朝霧や朝露(自然界の結露現象)を発生するような多湿の空気を壁内に通せば壁の中は多湿になり腐巧菌が発生しやすくなります、確かに時間がたったりシーズンが変われば乾燥しますが、乾湿を繰り返せば釘は錆びやすくなり材木は腐りやすくなり、また紫外線も多少は入り込み経年劣化(風化)は進みやすくなります。

 数百年の耐用年数が証明されている城郭の壁、社寺建築の壁、蔵造りの壁で壁の中に外気を通しているものはありません,そして左官材に塗り込められた(空気に触れていない)木材が腐りにくいことは古家を解体した時、貫や木舞だけでなく木舞縄すら腐っていないことからも明らかです。

 通気層の目的は
 (1)冬に高温多湿になった室内の湿気を外気に逃がす 
 (2)手抜き工事やシール等外壁材料の経年劣化で、雨水が壁の中に入った時に通気層に流し、部屋の中に滲みこまないようにする
の二つです、断熱材に入り込んだ湿気を断熱材の中に留めることなく直接外気に排出し、雨水が壁の中に沁みこまなければ通気層は要りません。

 木造住宅の壁内で水を流して良いのは《給・排水管》だけです,それ以外の所に水が流れれば住宅が腐るだけです。 

 壁の中に通気層のような密閉されていない空気層があれば、そこに小昆虫がはいりやすくなり、小昆虫が入り込めば通気層は小昆虫の営巣地になるおそれもあります。 営巣地が出来ればその周りに死骸などが発生し、それにカビが生えてアレルゲンのもとになります。

 また高性能住宅であるにもかかわらず、小昆虫駆除をしたためにお施主さんが化学物質過敏症になるという、家が凶器になった事例も報告されています。
  1. OMソーラーハウスの場合はシロアリ駆除に使ったクロルピリホス(農薬)で。
  2. ソーラーサーキット住宅の場合は(中村弥生著 土屋書店発行「いい家がその価値を失う時」より)アメリカシロヒトリ駆除につかったクレゾールで。 
 この二つの事例は壁内の空気層が薬剤の蒸気を家屋全体に広める役割を果たしていました。

 いずれの場合もお施主さんは、化学物質過敏症になり、取り返しのつかない事になっています。


4)【通気層内の黒かび】

 近年、通気層の中の縦胴縁の周りの合板が2階までカビが生えるという劣化被害が散見されています、原因はサイディングの雨水処理に使用したシール材が耐用年数(15年〜20年)を過ぎたため、シールの部分から雨水が通気層内に滲入し縦胴縁とその周りを腐らせたとされ、又、シールの耐用年数が過ぎる前に瑕疵が明らかになった場合は縦胴縁の巾が足りずサイディングが動いてシールが切れたとされ、そのためシールを使用しない左官仕上げが見直され始めています。

 しかしながら、シールの経年劣化で雨水が滲みこんだのが劣化の原因ならば、被害は1階の下部の壁に集中するはずです(水は下に流れる).。またシールのない部分の胴縁の周りにも黒カビが生えていればシール以外の原因を考えなければなりません。

 2階の壁の胴縁回りにも平均的にカビが生えていれば、湿気の動きが原因である事が考えられます(瑕疵が明らかになった時期とシールの経年劣化の時期がたまたま一致しただけと言う可能性もあります)。

 通気層が本来の機能を果たしていれば、湿気が原因でも、通気層内に雨水が滲みこんでも、雨がやめば通気層内を空気が流れて乾燥して黒かびは生えないはずです。

 

 構造用合板に透湿防水シートを張り、それを胴縁で押さえたために、何らかの原因で構造用合板と透湿防水シートの間に入り込んだ湿気に毛管現象が働き、低い水蒸気圧で結露して、そのために黒カビが生えた可能性が有ります。


 通気層内に黒カビが発生するということは、現在多用されている18o〜25oの通気層が本来の機能を果たさずに通気層内の空気が澱み空気になっている可能性があります

 

 左の2枚の写真は厳島神社の千帖閣の床下と小屋裏の写真です、澱み空気の出来るところはありません。
 
 数百年の耐用年数を求めるのならば建物内に澱み空気が出来てはいけないのです。

 土置き瓦屋根は瓦の間から湿気を逃がします、また土蔵造りの壁には湿気を堰きとめる物は使われておりません、日本の気候には
  • 澱み空気を作らない
  • 湿気は直接外気に逃がす
 と言う工法があっているのです
 数百年の耐用年数のある日本の木造建築物は、内外に結露の元になる温度差が無いにもかかわらず、澱み空気を作らない工法です、現代の高断熱住宅は内外に温度差が出来るのは当たり前とされています。

 長期優良住宅の壁内には澱み空気を作ってはいけないのです。
 


5)【湿気の処理の仕方】


 写真は茅葺屋根です、茅葺屋根は理想的な断熱のシステムです。
降った雨は室内に入れない、夏の照りつける太陽の暑さも冬の寒さも防ぐ、そして室内で発生した湿気はすべて室外に排出する、しかも屋根全体からむらなく排出します、まさに理想的な湿気の処理の仕方です。

 建物は高気密化すればするほど湿気は建物の中にこもります、充填断熱の時、室内側に施工する防湿シートはほとんど湿気を通しません、外張り断熱で家をすっぽり包む50oの発泡系断熱材も構造用合板の2倍から3倍位湿気をせき止める力があります。

 「高気密・高断熱住宅」の湿気は閉じ込められて行き場がなくなっています。

 湿気の大きさは10万分の4ミリと言われています、夏と冬に空調して室内外に温度差ができれば水蒸気圧に差が出来て湿気は水蒸気圧の低い方へ流れようとして壁の中に入り込みます。

湿気の処理の仕方を茅葺屋根から学ぶにしても、現実には防火性、構造的な強さ、耐久性、壁厚の制限、職人の数などの制約があり茅葺屋根を壁にすることは不可能です。

現在ある建材で都会地に対応させた湿気の処理をするには
  1. なるべく透湿抵抗値の高い断熱材を使うこと
  2. 内・外装材を断熱材よりも透湿抵抗値の低い物を使う事
以上の2点を守って壁構造を考えれば、断熱材の中に湿気が残らない茅葺屋根に近い湿気の処理ができます。
 


 高気密・高断熱住宅で外気と遮断しなければならないのは温度だけです、その意味ではグラスウールは湿気と空気は通すが温度は通さないと言う理想的な性質を持っています、もちろん、風が強い日には空気と一緒に温度も逃げてしまう恐れはありますが、外壁の構造でそのような欠点を克服できれば、グラスウールは大きな可能性を持った断熱材と言えます。

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